私の小さな恋人麻里ちゃんは、毎朝欠かさずお見送りをしてくれています。

二日間ほどお見送りが無かったのは、岡山県におられるご主人のおじいちゃんが亡くなられ、家族全員でお葬式に行っていたためでした。

毎朝、8時25分に駐車場にやって来ます。

雨が降る中、黄色いレインコートに黄色い傘をさして、私のそばにやって来ます。

そして可愛い笑顔で「おはようございます」とペコリと頭を下げます。

私も「麻里ちゃん元気ですか」麻里ちゃんは大きな瞳をクリクリしながら「元気でーす」

横で母親がニッコリ微笑んでいます。そして衝撃的な言葉が・・・・・

「いつもありがとうございます、麻里は首藤さんのことが大好きなんです。毎朝8時20分にエレベーターホールに行くんです。保育園がお休みの日は14階の窓から首藤さんをお見送りしてるんですよ、昔の私のように」

えっ、どういうことですか?

そういえば、30年位前私が今のマンションに引っ越してきたころ円ちゃんという幼稚園児と仲良くなりました。まどかちゃんを娘のように思っていました。

母親が「私は30年前から首藤さんを知っています。高橋まどかです」

数年前に両親が居たこのマンションを譲り受け引っ越してきたんです。

次のマンションもご一緒ですね。

何と、麻里ちゃんの母親がまどかちゃん・・・・・・・

まどかちゃんは私に会ってすぐに解っていたようです。

私はまどかちゃんのことはすっかり忘れていました。

私の記憶には「おじちゃん遊ぼうよ」と言う小学生のまどかちゃんしか残っていません。

30年前、娘のように思っていたまどかちゃん、そして今、小さな恋人いや孫のように思える麻里ちゃん。

子供がいない私には娘と孫が出来たような嬉しさ、そして毎朝娘と孫に見送ってもらえる喜び。

麻里ちゃんは涙ぐむ私と母親を見て不思議そうな顔をしています。

まどかちゃんは今35歳、あの可愛い幼稚園児がたくましい母親に・・・・・

信じられないくらい衝撃的な朝でした。